農家民宿こいや

家族でゆったり寛げる一棟貸しの農家民宿は「いるだけで落ち着く、癒される」とリピーターに人気。

水の神様に守られた千代川の地に開業した、鯉に縁がある農家民宿

亀山城主の明智光秀が内藤氏の居城である八木城を攻める際、戦勝祈願をしたと言われる岩城神社。苔むした石垣が美しい境内が印象的な、この神社は亀岡市千代川町にあります。

神社の前には水路があり、清らかな水がこんこんと流れていました。千代川という地名にもあるように、ここは古くから小川や水路が多く、水の神様に守られた場所なのです。

岩城神社の斜向いにある農家民宿が「こいや」さんです。重厚な門構えに掛かっているのは、家紋が染め抜かれた暖簾。

暖簾をくぐると、屋号の「こいや」に関係している「錦鯉」が優雅に泳いでいました。

オーナーの八木孝弘さんと知子さんご夫妻。

靴を脱いで玄関を上がり、通されたのは床の間のある和室。
障子の柔らかい光に包まれた落ち着きのある空間になっています。
天井の明かりも簾(すだれ)に覆われて、絶妙に調光されていました。こちらは地元の「川崎すだれ」の簾。


家族でゆったりと寛げる一棟貸しの宿は、教えたくない「隠れ家」としてリピーターも多い

——古さと新しさが融合したような、趣ある建物ですね

「ここはもともと隠居(離れ)と蔵に別れていたものを一つにつなげたんですよ。水回りなど設備は新しいものを入れて、階段も角度を変えて付け替えたりしたので、工事は半年くらいかかったかな。壁は珪藻土で、地元の左官屋さんにお願いしました」

——農家民宿としてオープンされたのはいつですか?

「2019年3月です。オリンピック前の盛り上がりもあり、嵐山には外国人観光客があふれてました。インバウンド需要も見込めたので『今しかない』という絶好のタイミングでスタートしたつもりだったんですけど…」

——それが…コロナ渦になってしまった。

「そうなんです!コロナになると分っていたら、こんなに改装費かけて、やらなかった(笑)。ただ、ありがたいことに今のところ来客数は一定の数を維持できています。たぶん一棟貸し(一日一組限定)にしているのが良かったのかもしれないですね。人の多い所は行きたくないけど、家族だけで泊まれる宿だったら安心みたいな。3回も4回も泊まってくださる方もいて、うちはリピーターが多いんですよ」


——リピーターに愛される理由はなんだと思われますか?

「大阪とか兵庫などの都市部から来られているお客様が多いのですが、『何をするわけでもないけど、いるだけで落ち着く、癒される』といった感想をいただくことがあります。1歳未満のお子さんがいる家族は、夜泣きが気になって旅行も行けない方も多いようですが、ここだったら周りの人の目を気にする必要もない。プライベート感があるんです」

自家製野菜と地元鶏の鶏すき焼き(公式サイトより)

新鮮な地鶏の『鶏すき焼き』には、農家として栽培している野菜がふんだんに使われている

——お料理の特色について教えてください

「近くの養鶏場で朝締めした新鮮な鶏をつかった『鶏すき焼き』をご用意しています。うちの畑で採れた野菜もふんだんに入っているので、地元の味を堪能してもらえるかと思います」

——八木さんの本業は農家をされているのですね?

「農家民宿と言いながら、農家でない人が経営されている所もあるけど、うちは正真正銘の農家がやってる民宿です(笑)。農業は自然が相手なこともあって、台風災害など何年かに一回ガクッと売上が落ちることがあるんですが、副業として民宿を営むことで、落ちた売上を補完できるかもしれないという期待もありました」

——農家としてはどんなものを栽培されているのですか?

「お米と万願寺とうがらし、冬場はかぶらを栽培しています。主に京野菜ですね。それと畑では『子どもに土に触れさせたい』という宿泊者のニーズに応えるために、収穫体験もやっています(予約制)。ジャガイモなどの野菜を土から引き抜いて、天ぷらにして食べていただけますし、残りは持ち帰ることもできます」

——農家民宿をはじめて、良かったと思うことはありますか

「ここに長く住んでいても、気づかなかった地元の魅力を、他所から来られたお客様から教えていただくことがあります。『いいところですね』と言われたら、地元に住む者としてはやはりうれしい。そのような声を直接聞けたときは、民宿をやって良かったと思いますね」

将来は屋号のルーツである「鯉」に関わることもしてみたい

——「こいや」さんの将来の構想やアイデアを聞かせてください!

「屋号にもなっている『こいや』というのは鯉屋のことなんですけど、初代がここで鯉の養殖を始め、京都の料亭に卸していたんです。時代の流れとともに廃業してしまいましたが、その名残があって、農家民宿を始める前から、地元の高齢者の方からは『こいや』と呼ばれていたんですよ。

そのルーツを大切にしたくてニシキゴイを飼っています。いまニシキゴイは日本よりも、ヨーロッパなどの海外の方が人気が高いんです。いつか海外から来られた愛好家の方にニシキゴイの買い付けツアーを企画してみたいですね。割と近い距離のところに養鯉場が3軒あるんです。その3軒をじっくり見て回り、鯉を買っていただくツアーです。実現したら面白いと思いますよ。ツアーの最後にうちに泊まってもらえたら最高ですね(笑)」

家族でゆったり寛げる一棟貸しの農家民宿は「いるだけで落ち着く、癒される」とリピーターに人気。

農家民宿こいや

住所:京都府亀岡市千代川町北ノ庄宮ノ前2

TEL:0771-25-1586

営業時間:チェックイン|15:00 チェックアウト|10:00

Web:「農家民宿こいや」公式サイト