竹岡醤油

亀岡の寒暖差と自然発酵に任せた伝統的製法を守り、地域に長く愛される竹岡の醤油づくり。

亀岡で150年以上の歴史を持つ、伝統的な醸造方法を守る醤油蔵

古くから亀岡には数多くの酒蔵や醤油蔵がありました。
愛宕山水系の全国屈指の名水の地であること、また、昼夜の寒暖差が大きく、原料となる穀物の生育に最適な土地柄であることが理由として挙げられます。

竹岡醤油株式会社は明治3年の創業。
150年以上にわたって東加舎(ひがしかや)で、伝統的な醸造方式で醤油づくりをされています。


入口に積み重ねられていたのは諸味(もろみ)を仕込む桶。
昭和30年代までは「木桶」が使われていたようなのですが、木桶の前になぜかモーツァルトのCDが…。
実は竹岡醤油さんは「モーツァルトが流れる醤油蔵」として有名なのです。


醤油蔵を見回すと、初めて見る機械や装置があちらこちらに並んでいました。


こちらは麦炒機といって小麦を炒るための機械。
粒度のこまかい川砂を熱焼し、焼き砂の高熱を利用して効率的に小麦を焙煎します。
焙煎された小麦は粉砕し、蒸した大豆と混ぜます。これが醤油の香り成分となります。

竹岡醤油のブログより


こちらは大豆を蒸すための装置。
脚立の上にあるのが蒸煮装置といわれるもので、タンクの中に大豆を入れて45分間蒸します。


蒸された大豆は煎った小麦と種麹を加え、湿度100%に近い麹室で約55時間寝かせます。
こうすることで麹菌が繁殖していきます。麹菌は酵素を大量に生成し、その働きで大豆と小麦が分解され、醤油麹が出来上がります。


できあがった麹はすみやかに塩水と混ぜて諸味(もろみ)とし、発酵、熟成させるために麹室からタンクに移動。


タンクの中では、麹菌から生まれた酵素によって糖やアミノ酸の生成(甘み・うまみ)、乳酸菌による乳酸発酵(酸味)、酵母によるアルコール発酵(香り)が行われます。こうしてタンクの中で二年ほど寝かせ、発酵、熟成を進めます。

蔵の奥では、諸味を搾り出す圧搾作業が行われていました。

布で濾し、液体と醤油粕とに分離させる

熟した諸味を布で包み、圧力をかけ、絞っていきます。布で漉された液体が醤油となります。竹岡醤油では、このような伝統的な方法で醤油作りが行われているのです。
ご案内してくださったのは6代目社長の竹岡晃一さん。

寒暖差と自然発酵に任せた天然醸造は、通常の倍の時間をかけて熟成させている

今も伝統的な方法で醤油作りをされていることに驚きました。

亀岡は古くから醤油醸造が盛んな土地で、最盛期は10軒ほどの醤油蔵がありました。今も4社の醤油メーカーがあり、ひとつの地域にこれだけ残っているのはなかなか珍しいのではないかと思います。その中でも当社は、全国的にも数少なくなった【寒仕込長期天然醸造】の蔵元として、伝統的な醸造方法に今も取り組んでいます。

寒仕込長期天然醸造とはどのようなものですか?

2月〜3月の寒い時期に醤油麹を仕込む伝統的な製法で、寒暖差と自然発酵に任せた天然醸造のことをいいます。市販されている多くの醤油は5ヵ月〜1年までの醸造期間ですが、当社は自然の力をそのまま利用しているので、仕込みから二夏(約二年)じっくり寝かせています。

蔵の中で本当にモーツァルトが流れていました。どのような効果があるのでしょう。

もともと福島県の酒造メーカーさんがモーツァルトを流しながら酒造りをされていたんです。クラシック好きだった私の父(先代)がそのことを知り、醤油作りに取り入れたのが最初です。今から30年ほど前のことです。モーツァルトをBGMとして醤油蔵内で流すことで、酵母菌など微生物が活性化し、より味わい深い醤油になるのです。

地域に根強く愛されている「タ印」の醤油は塩分もひかえめ

他にはどのような特色がありますか?

当社の醤油を愛用してくださっているお客様は50〜60年使い続けてくださっている方が多いのですが、大手メーカーの醤油は辛くて使えないということで、うちの醤油を選んでくださっています。そういうこともあり、竹岡醤油は全商品に対して極限まで塩分をひかえめにしています。

個人のご自宅に配達することがあるのですが、「やはりこの醤油でないと困る」と言ってくださるお客様も。実際の生の声が聞けるのは大変有り難いことですね。

伝統を守ること以外に新しいことも取り組まれているそうですね

はい。いま力を入れている商品に「泡しょうゆ」というものがあります。これは、スプレー式容器から泡状の醤油を噴きつけるもので、ふんわり、まろやかなおしょうゆの香味とコクが引き立ちます。普通の醤油なら上からかけて垂れてしまい醤油の量が多くなってしまうのですが、泡だと一回のポンピングでしっかり醤油の味がつきます。少量で風味も良く、減塩効果もある、というのが「泡しょうゆ」の特色ですね。

伝統を守りつつ、新しさを取り入れた竹岡の醤油を世界にアピールしたい

最後に今後の抱負をお聞かせください

当社は創業153年目になりますが、200年を目指したいというのが目標ですね。地域に長く愛用してくださっている方がいるので、今までの味を守ることが一番です。ただ、市場全体が縮小傾向にあるので、新商品や関連商品も充実させていきたいですね。また、年々市場が拡大している海外も視野に入れて、伝統的な醸造方法でつくられた醤油を世界にアピールしていきたいと考えています。

亀岡の寒暖差と自然発酵に任せた伝統的製法を守り、地域に長く愛される竹岡の醤油づくり。

竹岡醤油

住所:京都府亀岡市本梅町東加舎磐ノ上9

TEL:0771‐26‐3007

営業時間:9:00~18:00(電話対応19:00)

Web:「竹岡醤油」公式サイト